11月3日、CNET JAPANはApple幹部であるマーケティング責任者のPhil Schiller氏、ソフトウェアエンジニアリング責任者のCraig Federighi氏、最高デザイン責任者のJony Ive氏への独占インタビュー記事を公開しました。
内容は主に「Macの存在意義」について語ったものとなっていますが、Appleが目指すMacとiPadの未来についておおよそ窺い知ることができる非常に興味深いものとなっています。
今回はこの記事内容をもとに自分なりに考察したMacとiPadの未来について語っていこうと思います。
Apple幹部が語る「MacとiPadを統合しない理由」
インタビューは新たに発表されたMacBook Pro Late 2016の話題から始まります。
同モデルでは新機能としてキーボード上部にタッチスクリーンを設けた「Touch Bar」がありますが、多くの人が期待しているようなタッチスクリーン化、もしくはiPadとの統合は実現されませんでした。
Apple幹部はこれについて「決してMacのタッチスクリーン化は行わず、MacとiPadとの統合も行わない」と言い切っています。
その理由としてタッチスクリーン化は不可能ではないが、Macにタッチスクリーンは特に有用ではなく、MacもiPadもあえて別個のものにしておくことで、両方の可能性を探ることができ、一方にはない独特な機能をもたせることもできると述べています。
たしかにMacは主にマウスとキーボードで操作、iPadは主に指での操作するよう設計されており、それぞれ違う状況で使用することを目的としています。新型MacBook Proの新機能「Touch Bar」もキーボードメインのMacだからこそ生み出せたと考えると納得できそうな話です。
しかしここで一つ思うのが、
それこそMacとiPadを統合すれば全て解決するのではないか?
ということです。
例えばSurfaceのようなタッチスクリーン搭載タブレットにキーボードを装着するスタイルの2in1PCを考えてみます。
通常のキーボードを装着してノートPCスタイルで使用する際はMacのように使用でき、キーボードを外す、または折りたたんでタブレットスタイルのときはiPadのように使用可能といったようにすることができれば、両者のメリットを合わせ持ったデバイスになるのではないでしょうか。新機能「Touch Bar」も問題なくキーボードに搭載できます。
とは言え、UIが大幅に異なるMacとiOSではこの実現は不可能ではないものの非常に難しいのが現実でしょう。それにこれを実際に実行するとなると莫大なコストもかかるでしょう。
AppleにとってMacとiPadを統合することは「大きな賭け」になるわけです。
少なからずAppleはこの点も考慮し、トータル的なメリットを考え、MacとiPadの統合をしない決断をしたことかと思います。
これからMacとiPadが向かう未来
ではこれからMacとiPadはどのような道をたどっていくのでしょうか?
少なくとも自分はインタビュー記事を読んだ限りだと、
AppleはMacそのものを、あるいはMacBookのみを捨てる道を選ぶ
のではないかと考えています。
というのも今回のインタビュー記事ではMacに関してネガティブな意見が目立ったように思います。
具体的には以下の通りです。
Jobs氏が2010年から「ポストPC」時代を説くようになり、いずれコンピュータよりもモバイルデバイスが好まれるようになると語ったからだ。
Cook氏も、2015年のインタビューで「もはやPCを買う理由はないのではないだろうか。いや、ほんとうに、なぜ買うのか?」と語り、iPad Proではなくパーソナルコンピュータを買う理由を問いただしている。この件に関するCNETの質問にCook氏は回答しなかった。
コンピューティングの未来はそもそもコンピュータですらないという可能性もある。仮想現実やホログラムかもしれないし、どんなモニターにも差し込める「スティック」型のPCかもしれない。今はまだ想像もつかない別の形になることも考えられる。それが現実になったとき、われわれが知っているMacはもう存在していない可能性もある。Appleはそんな未来を恐れていないし、自社製品を破壊的に変革することも恐れていないという。
Schiller氏は次のように述べた。「MacBook Proの進化を止めたくなかった。当社はこれを非常に大きな前進ととらえている。これは新しいシステムアーキテクチャであり、今後登場する多くのもの、今はまだ想像もできないものを作り出すことができる」
「(Touch Barという)方向性に、それをベースとして使うことに、われわれ全員が深く納得している。非常に興味深い方向性の始まりとも感じているが、あくまでも始まりにすぎない」(Ive氏)
これらの発言はMacに将来性を感じるものというよりむしろiOSのようなモバイルなデバイスにむけたもののように感じられます。
例えば、Ive氏は「(Touch Barは)非常に興味深い方向性の始まり」と述べていますが、これは必ずしもMacに向けた発言ではない可能性があります。
なぜならTouch BarはMacの新機能というよりどちらかと言うとキーボードの進化系と言えるもので、別にiPadのキーボードに搭載しても構わないものだからです。
Schiller氏の「MacBook Proの進化を止めたくなかった」という発言もまるでMacの進化がもう終わってしまうかのようなネガティブさを感じます。
あのカリスマ的リーダー、スティーブ・ジョブズ氏の「いずれコンピュータよりもモバイルデバイスが好まれるようになる」という発言も
現CEOティム・クック氏の「もはやPCを買う理由はないのではないだろうか。いや、ほんとうに、なぜ買うのか?」という発言も
明らかにMacに将来性を感じるものではありません。
これらのことから考えるにAppleはMacに対し、いつかは終止符を打つ、あるいはプロ向けのOSとして残し、大半のユーザにはiPadなどをiOSデバイスをPCとして使用してもらうことを想定しているものと予想します。
現実にiPadをメインのPCのように使う人はだんだん増えてきています。
iOS 9ではついに2画面同時表示可能な「Split View」が追加され、iCloudを使えばMacのデスクトップ、書類のデータをiOSデバイス間で共有可能になるなど、だんだんとPCの使い勝手にに近づいています。
対するMacは基本的にはiOSの後追いで「Split View」や「ピクチャインピクチャ」、「Touch ID」などだんだんとiOSの使い勝手に近づいています。
iOSはPCに近づき、MacはiOSに近づくとなると最終的にどうなるのでしょうか?
単純に考えれば「iOSとMacが統合する」と言いたいところですが、Appleはこれを否定。そして、Macの進化が止まりつつあることを自覚しています。
そうなるとやはりMacがなくなり、iOSがPCになる未来しか見えません。
実際、Macはもうすでに完成された感じはありますが、iOSにはまだまだ将来性があると自分は思っています。
おそらくMacは近い将来一般ユーザ向けのOSではなくなり、iPad、あるいはiPhoneがPCに置きかわるデバイスとして進化を遂げていくことになるでしょう。
そうなると自然とMacBookは姿を消し、高性能なMac Proなどは残される可能性はありますが、大半のユーザにはiPad、またはiPhoneで十分な時代が来ることが考えられます(すでにMacではMacBookが十分な性能に達し、MacBook Proの必要性が問われる時代となっています)
もしかすると仮想現実やホログラムなどの新技術により全く新しいデバイスが登場する可能性もありますが、少なくとも今の時点で現実的に考えますと、このシナリオが妥当なものであり、将来訪れる未来なのではないかと自分は考えます。
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