米メディアWirecutterにて4Kモニターのガチ比較が掲載されました。
よくある「オススメモニター◯選!」と謳われているが何を根拠にそのモニターを高画質としているのかよくわからない記事とは違い、きちんと色測定を行い、データ化した上での比較が行われています。
内容はなかなかガチなもので、本当に高画質を求める人なら「こんな比較を待ってた!」と言えるようなものとなっています。
ただ、あくまでこの選定は米基準なので、今回は日本での販売状況を踏まえた上で選ばれた4Kモニターを紹介していこうと思います。
高画質4Kモニター審査基準
選ばれたモニターを知る前にWirecutterがどういった基準でこの高画質モニターを選定したのか知っておくべきでしょう。
選定基準について同メディアは非常に多くの項目を上げていますが、簡潔にまとめますと以下の通りです。
- サイズ:27インチ前後(32インチより上はデスクでの用途に向かないため除外)
- ディスプレイ技術:IPS液晶(TN、VA液晶方式は視野角、色再現性が劣るため除外)
- 価格:4〜5万円前後の手頃な価格(10万円以上の高額モニターは除外)
- 端子:4K出力できるHDMI、DisplayPort、USB-Cなどはあるか
- コントラスト比:1000:1以上(IPS液晶の一般的な水準)
- 色域、色精度:高画質の最重要項目。色が正しく表示されているか(色精度)。表現できる色の範囲はどうか(色域)。詳しい検査方法は後述
- リフレッシュレート:4Kを60Hz以上で出力できるか
- その他:デザイン性、コントロールボタンの使いやすさ、スタンド及びVESAマウント対応の有無、3年以上保証ありなど
検査したメーカーはAcer、Asus、BenQ、Dell、HP、LG、ViewSonicなど4Kモニターを扱うメーカー。上記基準を満たさないモデル、市場に出回っていない入手困難なモデル、高額すぎるモデルなどは除外した結果、最終的に数十個のモニターから検証したとのこと。
検証方法
色の測定にはX-Rite i1Basic Pro、X-Rite OEM i1Displayの測色計を使用、WirecutterのシニアスタッフライターChris Heinonen氏が設計したCalMAN 2019ソフトウェアキャリブレーションのカスタムテストを用いてモニター検証が行われています。
このCalMANテストによりDeltaEの数値を生成。これは色精度を表し、数値が小さいほど色精度が高いことを示します。
DeltaE値が1.0未満は完璧。 2.0未満は印刷物制作の作業には十分、たとえ完全に色が正確なリファレンスモニターがあっても違いに気付くことはないレベル。 3.0以上は肉眼で違いが見られるレベルです。
色域も高画質モニターには重要。色精度が高くても色域が狭くては意味がありません(逆もしかり)。
理想は一般向けのsRGB色域100%カバー(低すぎてもいけないし、超えてもいけない)。より広い色域の映画制作者向けDCI-P3色域は100%カバーは非常にまれで、80%以上あれば平均より上。DCI-P3はApple製品で広く採用されていますが、対応した映画などでないと意味がないため重要性は低め。
色精度と色域の両方が完璧なモニターはプロレベルの制作者が意図した色に近づき、画質が格段に向上します。このレベルのモニターはよく「窓」のようになると言われ、このモニターでプロが制作した映像を見ると、まるで映像の中のものが実際にその場にあるような理想的なものとなります。
モニターの明るさは140cd/m 2で固定。
これは日常使用に適した値で、白の詳細を失うことなくできるだけ高いコントラストが設定可能。
モニターごとに組み込まれたカラー設定の中から最も正確な色を生成したものに注目して検証が行われています。
高画質4Kモニター5選
最優秀モニター:Dell U2720Q
色検証結果(sRGBカラー設定)
- コントラスト比:1156:1
- グレースケール:DeltaE 0.6803
- カラーチェッカー:DeltaE 0.8602
- 彩度スコア:DeltaE 0.6861
- 色域:sRGB 99%、DCI-P3 95%(公称値)
良い点
- DeltaE値1.0未満の完璧すぎる色精度
- sRGB色域をほぼ完璧に再現(公称値99%)
- 1156:1の高コントラスト
- HDMI 2.0、DisplayPort 1.4、USB-C×2、USB-A×3の充実した端子
- 洗練されたベゼルレスデザイン
- 上下移動、横回転、90度回転可能でぐらつきの少ない安定したスタンド
- ほとんどの人にとって手頃な価格帯
- 1ドットでも欠陥があれば交換可能な3年間のプレミアム保証付き
悪い点
- 内蔵スピーカーなし
- 標準カラー設定では公称値のDCI-P3 95%に近い色域をカバーするもDeltaE値は3前後の標準スコアになる(sRGBカラー設定でDeltaE値1未満になる)
- モニター底のプラスチックカバーが離れて隙間ができているという苦情が米Amazonレビューにある(同メディアは確認できなかった)
同メディアの最優秀4Kモニターに選ばれたのがDellのU2720Qです。
検証結果を見る限り、スピーカーが内蔵されていないこと以外欠点のないモニターのようにも思えます。リフレッシュレートはゲーミング界隈で流行りの120Hzを超えるものではなく、一般的な60Hzですが十分なスペックです。
高画質を求めるユーザーにとって現状ベストな選択肢と言えるでしょう。
準優勝モニター:HP Z27
色検証結果(sRGBカラー設定)
- コントラスト比:985:1
- グレースケール:DeltaE 1.4892
- カラーチェッカー:DeltaE 1.4621
- 彩度スコア:DeltaE 1.4703
- 色域:sRGB 99%(公称値)、DCI-P3 83%(測定値)
良い点
- DeltaE値1.5未満のほぼ正確な色精度
- Dell U2070Qより少し安い(日本価格はかなり高め)
- HDMI 2.0、DisplayPort 1.2、USB-C×2、USB-A×4の充実した端子
- 上下、傾き、回転可能なスタンド
- 非常に優れたデザイン性
- 1ドットでも欠陥があれば交換可能な3年間の保証付き
悪い点
- 内蔵スピーカーなし
- コントラスト比は985:1とやや低め
- 標準カラー設定だとDCI-P3 83%カバーするも色精度が非常に悪くなる
- 3辺フレームレスも下フレームはやや厚め
- 日本価格は非常に高く、入手困難
2番目に選ばれたのはHP Z27。
画質は全体的にDell U2720Qに劣り、米国基準では安いとされていますが、日本では倍近くの値段差がついており、デザイン性の良さ以外でこのモニターを選ぶ理由はほぼありません。しかも日本では公式サイトですら販売されておらず、公式販売店のみの取り扱いという入手困難な代物。
高画質モニターとしてはかなり優秀ですが、Dell U2720Qがあらゆる面で良すぎるため日本ではかなり劣勢な製品です。
低予算モニター:ASUS VG289Q
色検証結果(Userモード設定)
- コントラスト比:1052:1
- グレースケール:DeltaE 3.871
- カラーチェッカー:DeltaE 2.79
- 彩度スコア:DeltaE 2.8572
- 色域:sRGB 不明、DCI-P3 90%(公称値)
良い点
- Dell U2720Qより100ドル以上安い(日本価格はむしろ高い)
- 1052:1の良好なコントラスト
- 上下、傾き、横回転、90度回転可能なスタンド
- ゲーミングモニターとしてAMD製とNvidia製GPUの両方でFreeSync同期対応
- ゲームや動画視聴などのカジュアル用途に適した内蔵スピーカー搭載
悪い点
- 色精度はDelta値3前後と普通(テストした低予算モデルの中では良好)
- 3年間の保証付きも3つ以上の明るいドット、5つ以上の暗いドット抜けがある場合のみのかなり限られた交換対応
- 日本価格が高い
米国基準では低予算なモニターとして選ばれているASUS VG289Gですが、残念ながら日本ではDell U2720Qよりも高く、コスパはあまり良くありません。
画質はHP Z27よりもさらに劣るこのモニターはどちらかと言うとゲーミング向けで、ゲームプレイ時のフレームレートが低下した場合などに発生するフレームのズレを防ぐFreeSync対応やそれなりに使えるスピーカーを搭載している点が特徴となっています。
画質重視なら選ぶ必要性は薄いですが、ゲーミング用途ならありかもしれません。
より大型なモニター:Dell U3219Q
色検証結果(標準カラー設定)
- コントラスト比:1343:1
- グレースケール:DeltaE 3.2521
- カラーチェッカー:DeltaE 1.7678
- 彩度スコア:DeltaE 1.8583
- 色域:sRGB 99.9%、DCI-P3 95%(公称値)
良い点
- 32インチの大きなディスプレイ
- 1343:1の計測した中で最も高いコントラスト
- グレースケール以外DeltaE値2未満の比較的良好な色精度
- HDMI 2.0、DisplayPort 1.4、USB-C、USB-A×3の充実した端子
- 傾き、上下、横回転、90度回転可能なスタンド
- 1ドットでも欠陥があれば交換可能な3年間のプレミアム保証付き
- 2台のパソコンを接続するとピクチャインピクチャまたはピクチャバイピクチャで同時表示できる
悪い点
- グレースケールの色精度はDeltaE値3程度の平凡スコア
- 27インチのDell U2720Qに比べて高い
- 内蔵スピーカーなし
より大型な32インチ4Kモニターにオススメとして選ばれたのがDell U3219Qです。
特徴はその大きさもありますが、2台同時にパソコンを接続して同時表示が可能な点があります。これは大型だからこそできることでしょう。しかし、大型がゆえにデスク上で使うには広いスペースが必要だと述べられています。
画質はDell U2720Qの大型版とされていますが、色精度は全体的に劣っています。特にグレースケールは平凡レベルです。それでもモニターとしては良好なレベルです。
なるべく高画質な大型モニターが欲しいという人向けの製品でしょう。
より小型なモニター:Dell P2415Q
色検証結果
- コントラスト比:1000:1(公称値)
- グレースケール:DeltaE 1.2166
- カラーチェッカー:DeltaE 0.8324
- 彩度スコア:DeltaE 0.7666
- 色域:sRGB 98%(計測値)
良い点
- 4Kモニターとしては数少ない小型な23.8インチモデル
- Dell U2720Qに匹敵するDeltaE値1未満の完璧な色精度
- 傾き、上下、横回転、90度回転可能なスタンド
- 1ドットでも欠陥があれば交換可能な3年間のプレミアム保証付き
悪い点
- 2014年発売の古いモデルなため画面周りのベゼルが太めのデザイン
- HDMI入力では4K/30Hzしか対応していない(DisplayPort経由なら4K/60Hz対応)
- 内蔵スピーカーなし
23.8インチの小型4Kモニターとして優秀なのがDell P2415Qです。
Dell U2720Qに匹敵する完璧な色精度を備え、手厚い交換保証も3年間ついています。しかしこのモデルは2014年発売と古く、太めのベゼルや4K/60Hz出力できない世代遅れのHDMI端子がついています。また、同メディアによれば23.8インチで4K表示するのは理想的ではないとのことで、テキストを拡大表示して見やすくする必要があるとのこと。
デスクの設置環境的に23.8インチモニターしか置けない場合などに推奨される高画質モニターといったところでしょう。
以上がWirecutterがガチ検証して選んだオススメ高画質4Kモニターとなります。
これらのモデルは米国基準となるため価格などは日本とは若干異なるものの、同等のモデルが日本でも発売されているためほぼこの結果通りのものになると思われます。だいたいDellが最強という結果となっていますので、世界展開しているDellのモニターを買って置けば間違いないでしょう。
日本でこのような比較を行っていることは非常に少なく、とても貴重な検証比較となっています。
本当に高画質なモニターを求める人はぜひ参考にどうぞ。
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