ifixitがAirPods Maxの分解画像を公開しましたが、同時に他社のワイヤレスヘッドホンとの比較も行われています。
異常すぎるAirPods Maxの内部設計
こちらがAirPods Max
R(右耳用)側にダイヤルとボタンがついています。
X線による画像がこちら。
見てみますと、R側にバッテリーセルらしき黒く四角いものが2つあり、L側にはバッテリーセルがないことがわかります。
このことから電力供給はRからLにヘッドバンド経由で送られていることが想像つきます。
イヤークッションは磁石でくっついており、簡単に外すことができます。
公式サイトでもイヤークッションだけの販売もされていて、交換できるようになっています。
そこからさらに分解するにはネジを外した上で、プラスチックが溶けないように注意しながらヒートガンを使用する必要があるとのこと。
内部にはバッテリーセルらしき黒い四角部品と大型な口径40mmドライバーが見えます。
内側にはマイクが配置されており、ここでスピーカーから装着者が聞いている音を検知し、すぐさま曲の周波数などを調整することで優れた音質やノイズキャンセリングなど実現している模様です。
40mmドライバーはネジを外すと簡単に外れ、スプリングコンタクトによって接続された交換しやすい設計であるとのこと。これは修理しやすいように設計されていることが考えられます。
バッテリーセルはR側に2つケーブルでつながれた状態で配置されており、L側には配置されていないようです。
さらにこのバッテリーセルは接着剤ではなく、ネジ止めされているとのことで、驚くほど簡単に取り外しが可能とのこと。こちらも修理しやすいよう考慮したものでしょう。
バッテリーセルは664mAh/4.35Vで2.53Whとのこと。
ロジックボードは形状に合わせてやや湾曲したものとなっています。
イヤーカップの隅にあるスリット状の穴には同じような穴があいたプラスチックが配置されています。
これはドライバーに大音量で歪みのない雰囲気を実現するための通気口とのことです。
L側には大型のアンテナが配置されています。
ifixitではこれはR側のバッテリーの重さを相殺するための重りなのでは?と思ったようですが、実際にはとても軽かったとのことです。
このAirPodsで最も手が込んでいるのはこのイヤーカップをつなぐヒンジ部品とのこと。
実際に動いている動画を見るといかによくできているかがわかります(ifixitのStep16参照)
ifixitによればこの部品は複雑に作り込まれすぎており、AirPods Maxの値段も納得な仕上がりであるとのこと。
この部分にはRからLへバッテリーの電源供給するためのケーブルを確実に通しながらも、快適で頑丈な装着感を実現するための設計が行われている模様。
ヒンジ部品を分解すると、フレックスケーブルが巧妙な経路でコネクタ固定部に接続され、そこからヘッドバンドに接続するためにスプリング式の接続部品に切り替えられていることが分かります。
これによりケーブルの摩耗による故障の減少につながることが予測され、非常に多くのことが配慮されている設計であることが明らかだとしています。
ヒンジ部分を取り外すと、スプリング、極小ベアリング、マイクロハウジングが表れます。
この2つの大きなスプリングが頭部に穏やかな荷重を実現し、さらに内側にあるとても小さなスプリングが後述する巧妙なトリックを実現するとのこと。
ここまでAppleが過剰な設計をする理由として、一つは装着時の快適さのためにイヤーカップをつなぐ関節部分が自由に柔軟に動くように少し丈夫にしておく必要があるということ、もう一つはヘッドホン自体が振動するため長時間の使用に耐えられるようにかなり頑丈にしておく必要があるためだとしています。
巧妙なトリックというのはイヤーカップ上部の小さな穴にピンを通すと簡単にヘッドバンドが取り外すことができるというものです。
これはApple公式が明らかにしていない機構ではありますが、わざわざこのような設計にしたのは修理のためだけでなく、ユーザーが簡単にヘッドバンドを交換できるようにするためでは?と予想されます。
総評としてifixitは混乱するほど過度に複雑な設計であるものの、とても実用的であり、550ドル(約6万円)越えの価格も合理的に思えるとしています。
他社製ワイヤレスヘッドホンとの比較
同社は追加で他社製のワイヤレスヘッドホンも分解比較しています。
こちらはSonyのハイエンドワイヤレスヘッドホンであるWH-1000MX4(350ドル)
外部はプラスチック製でできています
フタはクリップで止められているだけで耐久性には欠けるとのこと。
L側にはSony製のQN1プロセッサが配置されており、R側には4.1Whのバッテリーセルがある模様。
L側のメインボードから簡易的に各コネクタに接続されているようです。
バッテリーは粘着力の強い接着剤で固定されており、取り外すにはイソプロピルアルコールが必要だったとのこと。
総評として全体的にそれほど悪くはない設計であるものの、AirPods Maxに及ぶのはまだまだ遠い道のりだとしています。
次にBoseのNC 700(380ドル)です。
こちらもSonyのWH-1000MX4と同様クリップ式でフタが固定されている模様。
分解の際にL側のケーブルが複雑に絡み合っていたとのこと。
回路基盤上にはQualcommのCSRA68105 Bluetooth audio SoCが搭載されている模様。
バッテリーはL側のドライバーの隣に接着剤でくっついており、接続ははんだ付けとなっているようです。容量は2.39Whの模様。
総評としてイヤークッション、ドライバー、オーディオジャックなどは交換可能であるものの、他の部品がほとんど固定されていて、部品交換などは困難だとしています。
AirPods Maxは機械式時計のよう
AirPods Maxは他社のどのヘッドホンよりも複雑で精密で、まるで機械式時計のようだと評価しています。
AirPods Maxの優れている点として、接着剤でくっついたイヤーカップ部品させ取り外せば、専用のツールでとても簡単に部品が交換可能であるということです。特に磁石でくっつくイヤークッションや簡単に取り外せるヘッドバンドを目にしてとても興奮したとのこと。
結果的に550ドルという値段設定は理解できるとしており、他社製の高性能なヘッドホンがおもちゃのように見えるとも述べています。
ヘッドホンを分解画像から比較するということはなかなかないと思いますが、こうして内部設計を見てみますと、AirPods Maxがケタ違いによく設計されていることがわかります。
それが音質に直結するかはまた別の話かもしれませんが、少なくとも頑丈さや快適な使用感に関しては他社よりかなりこだわっていることが伝わってきますね。
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